コロニー
結婚飛行の時刻は種ごとにほぼ決まっており、クロヤマアリやクロオオアリは日中、トビイロケアリは早朝に飛び立つことが多い。また、キイロケアリは夕方、ハヤシトビイロケアリやカワラトビイロケアリは日没直後に飛び立ちます。交尾(こうび)は空中または地上で行われ、一度の交尾で女王アリは雄アリからすべての精子(せいし)を受け取ります。受け取った精子は受精嚢(じゅせいのう)に蓄えられ、女王アリ脱翅(だっし)し、小さな巣室をつくって閉じこもります。雄アリは交尾を終えるとその役割を終え、まもなく死に絶えます。
その後、女王アリは巣室で卵を産み、唾液(だえき)で幼虫を育てます。腹部(ふくぶ)の脂肪体(しぼうたい)や不要になった飛翔筋(ひしょうきん, 羽の付け根の筋肉)は分解されて幼虫に与えられます。ヤマアリ亜科やルリアリ亜科などの高等な女王アリは、巣作り以降巣外に出ることはありません。一方、キバハリアリ、ノコギリハリアリといった下等なアリについては、女王アリがしばしば巣外に出てエサをとります。
最初に育てられた個体はすべて小さな働きアリで、エサやりや幼虫、女王アリの世話を行います。女王アリは産卵(さんらん)活動に専念します。働きアリが増加するにつれ、女王アリの産卵力(さんらんりょく)は高まり、コロニーは年ごとに成長していきます。コロニーが一定の大きさに達すると、幼虫の一部から羽アリが育てられるようになります。しかし、女王アリの産卵力には生理的限界(せいりてきげんかい)があり、コロニーの成長はやがて頭打ちとなり、女王アリの死によってコロニーは滅びていきます。アリの寿命(じゅみょう)については正確な調査はないのですが、一般的に、働きアリで1〜2年、女王アリで十数年ぐらいと推定されています。
コロニーの成長はロジスティック曲線に従うことがハキリアリで証明されています。成長したコロニーに存在する働きアリの個体数は、クビレハリアリ、カドフシアリでは数十と少ないが、高等な種では千から数万になり、グンタイアリでは200万、サスライアリでは2000万にも及びます。
コロニーの創設は、女王アリが単独で行うタイプ、複数の女王アリが共同して行う多雌創設(たしそうせつ)タイプ(プレオメトロシスともいう)、女王アリが他種のアリのコロニーに入り込んで自分の子供を育てさせる社会寄生(しゃかいきせい)タイプ、女王アリと働きアリが母巣を出て新しいコロニーをつくる分巣(ぶんそう)タイプがあります。
多雌創設(たしそうせつ)タイプはシワクシケアリでしばしばみられ、分巣(ぶんそう)タイプはツノアカヤマアリ、エゾアカヤマアリで行われる。一時的な社会寄生種(しゃかいきせいしゅ)は日本で十数種が報告されています。例えば、アカヤマアリはクロヤマアリに、クロクサアリはアメイロケアリに、アメイロケアリはトビイロケアリに、トゲアリはクロオオアリにそれぞれ一時的に寄生します。一時的社会寄生では、寄生アリの女王アリは寄生アリの女王アリもしくは働きアリによって殺されるため、初期には2種の働きアリをもつ混合コロニーであるが、やがて寄生種の1種類の純粋なコロニーとなります。
サムライアリの女王アリは、クロヤマアリのコロニーに寄生して自分のコロニーを創設します。しかし、サムライアリの働きアリは、採餌(さいじ)や幼虫の養育(よういく)ができません。そのため、毎年夏にクロヤマアリを対象に、繭(まゆ)や幼虫を略奪する奴隷(どれい)狩りを行い、奴隷にその役目をさます。このようなコロニーはつねに両種の働きアリをもつ混合コロニーとなりますが、サムライアリの働きアリは、奴隷狩り以外には巣外に出ないので、クロヤマアリの巣との区別がつきません。アカヤマアリもクロヤマアリの奴隷狩りを行いますが、アカヤマアリの働きアリは、サムライアリと異なり、採餌(さいじ)や育児活動を行います。
多くの種では、一つの巣につき1匹の女王アリが存在するが(単女王性, たんじょおうせい)、種類によっては結婚飛行後に女王アリが結婚飛行後に母巣に戻ったり、母巣内で交尾をして居残ることで、一つの巣に複数の女王アリが存在するものもあります(多女王性, たじょおうせい)。多女王性の巣では、コロニー全体の産卵力は高くなります。単女王性のコロニーの成長は、一定の大きさで頭打ちになるのに対し、多女王性のコロニーでは、営巣場所や餌に限界がなければ、その成長は無限といえます。多女王性のエゾアカヤマアリのコロニーは、新しい巣をつくり次々に分裂していきます。
